第11話|12部屋、全部は直しません。

旧教員宿舎には、

3DKの部屋が12戸あります。

普通のアパートとして考えるなら、答えは分かりやすい。

12部屋を直して、12部屋全部を貸す。

でも、LISONO LIFEでは、

12部屋すべてを一気に直すつもりはありません。

理由の一つは、これまで何度も書いてきた通り、

お金がないからです。

一部屋100万円でも12部屋なら1,200万円。

200万円なら2,400万円。

しかも、旧教員宿舎で必要なのは内装だけではありません。

屋上防水。

井戸。

浄化槽。

外回り。

森。

限られた資金をどこへ使うのか。

考えなければなりません。

でも最近、

「全部を一気に直さない」という考え方は、

単なる資金不足への対応ではないのかもしれない、

と思うようになりました。

きっかけの一つが、

島根でした。

出雲大社は、「一つの建物」ではなかった。

島根で最も有名な場所の一つ、

出雲大社へ行きました。

もちろん、本殿を見ます。

でも実際に歩いてみると、

体験は本殿だけではありません。

参道を歩く。

鳥居をくぐる。

境内を巡る。

周辺の店へ入る。

蕎麦を食べる。

少し離れた場所へも足を延ばす。

一つの巨大な建物が、

観光客の体験を全部担っているわけではありません。

いくつもの場所や小さな体験が重なって、出雲で過ごす一日ができている。

当たり前のことですが、

現地で歩くと強く実感します。

旧教員宿舎も、12室すべてが同じ役割でなくていい。

いすみに戻って考えました。

12戸あるから、

12戸全部を同じ賃貸住宅にしなければならない。

そんなルールはありません。

ある部屋は、

普通に暮らす場所。

ある部屋は、

DIYしながら暮らす場所。

ある部屋は、

旅人が泊まる場所。

将来的には、

建物の一部に小さな商いが入ってもいい。

外には森があります。

RVで泊まる人が来るかもしれない。

つまり、

旧教員宿舎だけですべてを完結させなくてもいい。

いくつもの小さな用途が集まって、一つの場所になる。

そんな形でもいいはずです。

12部屋完成してから、答え合わせするのは怖い。

例えば、

12部屋を一気に改装した。

1,500万円かかった。

そして募集した。

でも、

想定した家賃では借りてもらえなかった。

かなり厳しい。

宿泊も同じです。

何部屋も改装してから、

「ここには宿泊需要がありませんでした」

では遅い。

だから、

一部屋つくる。

人に使ってもらう。

反応を見る。

次をつくる。

この順番にします。

最初の一部屋が、二部屋目をつくる。

理想はシンプルです。

一部屋目を再生する。

そこから収入が生まれる。

そこで得たお金と経験を、

二部屋目へ使う。

二部屋目から得たものを、

三部屋目へ。

一部屋ずつ、建物自身に次の再生費用を稼いでもらう。

最初から完成させるより、

時間はかかります。

でも、

失敗も小さくできます。

島根で感じたのは、「点」が集まる強さだった。

出雲大社だけでなく、

旧大社駅。

日御碕。

玉造。

石見銀山。

それぞれ、

単独で違う魅力があります。

全部が同じデザインでも、

同じ業態でもありません。

でも、

それぞれが存在していることで、

「島根へ行ってみたい」

という理由が増えています。

旧教員宿舎も、

一つの完成された巨大施設ではなく、

小さな魅力が少しずつ増えていく場所

にできるかもしれません。

だから、

12部屋全部は直しません。

まず、

一部屋。

そこから始めます。