第5話 なぜ、こんなボロ物件を買ったのか。

実験場

500万円。

RC3階建て。

12戸。

約3,000㎡の土地と森。

数字だけ並べれば、かなり魅力的に見えます。

でも、実際には雨漏りがあり、井戸や浄化槽も確認が必要で、部屋もそのまま使える状態ではありません。

普通の不動産投資なら、

もっと手のかからない物件を買えばいい。

その通りだと思います。

ではなぜ、LISONO LIFEの第一号物件として、わざわざこんな物件を選んだのか。

今回は、その理由について書きます。

安かったから。

まず、正直に言えば、

安かったからです。

綺麗な理由だけを書くつもりはありません。

500万円という価格は、非常に大きな魅力でした。

もしこれが5,000万円だったら、私は買っていません。

LISONO LIFEは資本金100万円で始めた小さな会社です。

大規模な資金を投入して、完成された施設を取得することはできません。

だから、

安く取得して、

自分たちで考えて、

必要なところから直して、

少しずつ価値をつくる。

最初から、その戦い方をする必要がありました。

ただし、

「安い」だけなら、買っていません。

私が見ていたのは、建物だけではありませんでした。

この物件を見に行ったとき、もちろん建物も確認しました。

12戸ある。

RC造。

3階建て。

部屋の状態。

屋上。

設備。

でも、途中から建物以外のものが気になり始めました。

土地です。

そして、その先にある森です。

約3,000㎡。

普通のアパート経営では、かなり持て余す面積です。

でも、逆に考えました。

これだけ余白があるなら、アパート以外のことができる。

それが、この物件を面白いと思った最初の理由でした。

12戸すべてを同じ使い方にしなくていい。

例えば、12戸の部屋。

普通なら、

12戸すべてをリフォームして、

12戸すべて入居者を募集する。

それが一番分かりやすい方法です。

でも、この場所で本当にそれが最適なのか。

私は疑問に思いました。

一部は普通の賃貸。

一部はDIYできる賃貸。

一部は宿泊。

将来的には、建物の一部で小さな商いが生まれてもいい。

用途を一つに決めなければ、

同じ建物から、いくつもの使い方をつくることができます。

これは、完成されたアパートを買っていては、なかなか試しにくいことです。

ボロボロだからこそ、

最初からつくり直せる。

それも、この物件の魅力でした。

森も、「邪魔な土地」で終わらせない。

建物の横にある土地と森も同じです。

何もしなければ、家賃を生みません。

それどころか、草刈りや管理が必要です。

でも、

車で旅をする人が泊まれる場所にしたらどうだろう。

森を残しながら、人が滞在できる場所をつくれないだろうか。

小さなイベントができないだろうか。

建物に泊まった人が、外でも時間を過ごせる場所にできないだろうか。

考え始めると、

「余っている土地」が、

まだ用途が決まっていない土地

に見えてきました。

この違いは、とても大きいと思っています。

海まで、車で約7分。

もう一つ大きかったのが、立地です。

物件から海までは車で約7分。

いすみには、海があります。

食があります。

自然があります。

東京から来ることもできます。

つまり、この建物だけで魅力を完結させる必要がありません。

宿泊する人にとっては、

建物そのものだけではなく、

「いすみでどう過ごすか」

まで含めて商品になります。

朝、海へ行く。

地域のものを食べる。

森で過ごす。

夜はこの場所に戻ってくる。

そう考えると、

築46年の古いRCを、新築ホテルのようにピカピカにする必要もないのかもしれません。

この土地だからできる過ごし方をつくる。

その方が、この物件には合っている気がしました。

問題が多いから、実験できる。

そして、少し変な話ですが、

問題が多いこと自体にも価値がある

と思いました。

雨漏り。

井戸。

浄化槽。

古い内装。

使われていない土地。

森。

一つひとつ、これから日本中の古い不動産を再生しようとすれば、また出会う可能性のある問題です。

だったら、

ここで一度、全部経験してしまえばいい。

どうやって業者を探すのか。

工事費はいくらなのか。

どこまで直せば使えるのか。

何を自分でやり、何を外注するのか。

どうやって資金を調達するのか。

どうやって収益化するのか。

そして、

何に失敗するのか。

この物件で一通り経験できれば、

次の物件では、もっと上手くできるはずです。

だから私は、いすみを

LISONO LIFE最初のPrototype

だと考えています。

「良い不動産」を探していたわけではない。

一般的な不動産投資なら、

高い入居率。

安定した家賃。

少ない修繕。

良い立地。

そうした条件が重要になります。

もちろん、それらは今でも重要です。

でも今回、私が探していたのは、

すでに完成された「良い不動産」ではありませんでした。

手を入れることで、大きく役割を変えられる不動産。

その方が、LISONO LIFEがこれからやろうとしていることを試せます。

500万円だから買った。

それは事実です。

でも、

安いだけでは買わなかった。

12戸の建物。

広い土地。

森。

海に近い立地。

そして、山ほどある問題。

全部合わせて、

「ここなら、いろいろ試せる」

と思いました。

この判断が正しかったのかは、まだ分からない。

ここまで書くと、

ものすごく考え抜いた末に、確信を持って買ったように見えるかもしれません。

でも、そんなことはありません。

不安はありました。

今もあります。

想定以上の修繕費が出るかもしれない。

宿泊客が来ないかもしれない。

DIY賃貸を借りる人がいないかもしれない。

RVパークが使われないかもしれない。

そもそも、資金調達がうまくいかないかもしれない。

いくら考えても、

未来のことは分かりません。

だから、

小さく始めます。

全部直してから答え合わせをするのではなく、

一つ直す。

使ってもらう。

反応を見る。

次を決める。

その繰り返しです。

この500万円の物件が、

LISONO LIFEにとって最高の第一号物件だったのか。

それとも、

とんでもない物件を掴んでしまったのか。

その答えは、

これからこのJOURNALの中で出てくると思います。